【NNAカンパサール特集・製造業の未来】地場人材育成は事業継続の要人が死なない現場を、KNDコーポレーション

アジアの経済情報をお届けするNNAが発行するフリーペーパー。「 NNAカンパサール」
「沸騰するアジアの今を伝える」をテーマに、アジア各国の製造現場、大きな変貌を遂げようとしている消費市場など、アジア全体の産業の現状を日系企業関係者必読の情報を織り込んでお届けしています。

こちらのカンパサールに掲載された中からjobwire編集室が気になる記事をピックアップしてお届けします。


低賃金の労働者を大量に雇い、辞めたらまた新しい労働者を探すというやり方はいつまでも続けられるものではない。結局は地場の人材を育てることがその国・地域のためになり、今後もアジアで事業を続けていくことができる。ものづくりはひとづくりから─。このような方針の下に現地展開する企業も存在する。ミャンマーやインドでの動きを見た。

朝一の工事現場、労働者たちが体操をする声が響く。日本では当たり前の光景だが、ミャンマーではまだ珍しい。場所は物流・施工業のKNDコーポレーション(埼玉県戸田市)が今年5月に立ち上げたヤンゴンの建設訓練学校。4カ月のコースを受講する学生たちが、朝の体操から型枠や鉄筋の組み方の技術、図面の描き方まで、建設・建築工事のいろはを学んでいる。

日本の引きのこを使い木材の切り方を学ぶ。工具類はすべて日本製だ(KND提供)

建築業の底上げを

学校を立ち上げたのは、ミャンマーの主要ゼネコン約200社が加盟するミャンマー建設業協会(MCEA)の要請を受けてのことだった。MCEAによると、ミャンマーでは「労働者のレベルや技術は低く、人の命も安い」という。工事現場で死亡事故が発生しても、もともと労働者としての登録がないので、死亡したのが誰だか分からないこともあるそうだ。

現場にはスカートのような筒状の民族衣装「ロンジー」にサンダル履きで入り、ヘルメットと安全靴着用という安全意識が全くない。「この状況を何とかしないと、ミャンマー建設業の底上げはできない。日本のノウハウや技術を導入したいが良案はないか」と打診されたのだ。KNDはもともと日本でミャンマー人の技能実習生を受け入れていた。神田充社長が実習生の面接でミャンマーに頻繁に通ううちに同国でのネットワークができていた。

ミャンマー人が運営できるように

学校で建築業人材を育成する今回の事業名は「日本水準の建築技能訓練者育成プログラム普及・実証事業」という。国際協力機構(JICA)から業務委託の形で、3年間で1億円の支援を受けている(2019年7月まで)。KNDが持つ建築技能訓練者育成のノウハウをミャンマーに根付かせ、普及させるのが目的。校舎はミャンマー当局が保有する施設を借り受けた。3年後にミャンマー人自身が運営できるようにして、学校事業を引き渡す計画だ。

図面の書き方を覚える(KND提供)

事業は短期間で日本水準の技術が習得できるコースの開発を目指している。これにより一定水準の技能を持つ人材や建築技能教育機関が増え、ミャンマーのインフラ整備が加速すると期待する。11年の民主化以降、インフラや住宅、ホテルなどの建設は急増しているが、今は人材や教育機関が圧倒的に足りていない状態だ。

ものつくり大学(埼玉県行田市)も教務面で協力する。大学は日本左官業組合連合会や日本型枠工事協会、全国鉄筋工事業協会などの業界団体とも強いつながりを持ち、これら団体から「現代の名工」に数えられる講師陣を派遣した。

1クラスは40人。大工、左官、型枠・鉄筋の3コースに、計120人が入学した。一部では授業についていけない者もいたが、最終的に約100人が残った。学生は全くの素人やMCEA加盟企業から派遣された幹部候補生などさまざま。そんな彼らが日本式の徹底した安全教育を受け、道具の使い方、レンガや木材、鉄筋などの扱い方を学んだ上で、木材の切断、鉄筋の加工、モルタルの塗り方を覚え、最終的には図面を描けるようになるまで育て上げる。卒業後は現場での指導者として他の人材を育成していくことも想定する。

卒業生は日本人と同じように墨糸で線が引け、図面が読めて、作業ができるレベルにある。働き口はMCEAの関連会社、つまり現地のゼネコンだ。日系企業に対しては、工場などを建設する場合、卒業生を採用している現地ゼネコンを活用するよう働きかけており、すでに数社が応じる動きを見せているという。

細かい仕事と段取り

神田社長は「ミャンマーではこれから、安全や衛生管理がより厳しくなっていく。それを先取りして人材育成に取り組んでいる。まずは人が死なない現場をつくることが大事」と強調する。

もう一つは、ミリ単位の細かい仕事をする「日本品質」の考え方、常に次のことを考慮しながら作業をする「段取り」の考え方を身につけてもらうことだ。この方が仕事のやり直しをしないで済むので、結局は早くなると理解してもらう。

手先が器用なミャンマー人は飲み込みも早いという(KND提供)

ミャンマーには中国企業も投資をしているが、MCEAは「(労働者を中国から連れてきて、中国産資材を使って工事をする)中国のやり方では、ハードウエアは残るかもしれないが、ノウハウは残らない。道路や建物をつくる人材を一から育てないと業界の底上げはできない」との考え。建設訓練学校でのノウハウを吸収し、一日も早くレベルを引き上げる構えだ。

※特集「NNAカンパサール特集・製造業の未来」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2017年10月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。

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